出生前検査(出生前診断)

出生前検査とは

お腹の赤ちゃんの発育、異常の有無を調べる検査のことを「出生前検査」といいます。
「超音波検査」では胎児の形態異常(形の異常)の有無を、「血液・羊水の検査」では染色体疾患を調べることができます。
一般的に出生前検査とよばれるものは、後者の染色体疾患を調べる検査のことをいいます。

何のために行う?出生前検査の目的

出生前診断の目的お腹の赤ちゃんの状態を調べ、出産後の治療の準備をすること、そしてお母さんの健康管理を行うことが、出生前検査の大きな目的です。
生まれる前の赤ちゃんの健康状態を把握しておくことで、適切な分娩方法を選択が可能となり、適切な療育環境を用意することもできるようになります。

出生前検査の種類

ここでは当院で実施している染色体疾患を調べる検査について説明します。

非確定的検査(染色体疾患の可能性・確率を調べる)
母体血清マーカー検査

妊婦の血液中の4つのホルモンの値を調べ、胎児の21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、開放性神経管奇形(二分脊椎、無脳症など)の確率を計算します。なおこの計算には、母体年齢なども考慮されます。
妊娠15週0日以降に行う検査です(15週前半に受けることをおすすめしています)。確率の判断のみで、確定診断には至りません。

コンバインド検査

超音波と採血を組み合わせた検査です。
胎児の首後方のむくみの厚み(NT)と、母体血液中のホルモン値の結果を統合し、胎児の21トリソミー(ダウン症候群)と18トリソミーの確率を算出します。妊娠11週0日から13週6日のあいだに行う検査です。超音波検査単独で行うよりも精度は高くなりますが、母体血清マーカー検査と同様、確率の判断のみで確定診断には至りません。

非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)

妊婦から採取した血液を用い、胎児DNA断片を分析することで、染色体疾患の可能性を調べる検査です。
精度の高い検査であり、妊娠9週0日以降という早い時期に受けられることが、この検査のメリットですが、確定診断ではありません。

確定的検査(診断が確定できる検査)
羊水検査

羊水検査(羊水染色体検査)とは、母体のお腹から針を刺して羊水を採取し、胎児の染色体疾患を調べる検査です。通常妊娠16週以降に行います。
当院で行っている検査の中では唯一、染色体疾患を確定できる検査です。一方で破水したり、感染したりすることにより流産となることや、稀ながら母体にも大きな合併症を起こす可能性のある検査です。羊水検査における流産の確率は、約0.3%といわれています。

当院では、検査の内容・メリットのみでなく、上記のような合併症のリスクについても事前に十分にご説明したのち、ご同意を得た上で、検査へと進みます。検査を検討する場合は、まず説明の動画を視聴していただきますので、スタッフにお問い合わせください。

出生前検査を受けるべき?メリット・デメリット

出生前検査を受けるかどうかは、難しい問題です。ただ、受けるという選択肢を知っておくこと、受ける場合のメリット・デメリットを把握しておくことが、最終的に「正しかった」と思える結果につながります。

メリット

赤ちゃんの状態を知り安心できる

妊婦中は、お母さん、そしてお父さんも「無事に育っているか」ということをとても心配されています。
出生前検査を受けることで、その不安が和らぎ、安心へとつながるかもしれません。

赤ちゃんの状態を知ったうえで事前の準備ができる

仮に赤ちゃんの染色体疾患がわかった場合、お腹の赤ちゃんの健康状態を把握しておくことで、適切な分娩方法を選択したり、出産後の適切な療育環境を用意したりすることができるようになります。

デメリット

結果によってはつらい思いをすることもある

陽性の判定を受けることで、お母さん、お父さんが悲しい思いをなさるかもしれません。また、時にはつらい決断をすることになるかもしれません。当院では、現状を正確にお伝えし、可能な対応をご案内できる体制を整えております。

検査でわからない病気もたくさんある

出生前検査で分かる病気は赤ちゃんの病気全体からみればごく一部だけです。
出生前検査が陰性であっても赤ちゃんが正常であるとは限りません。また、非確定な検査は確定診断ではないため、時に結果が間違うこともあります。

検査が命の選別につながるという懸念

中絶が可能な時期に出生前検査を行うことが、「命の選別になっている」という指摘もあります。出生前検査の意義を正しく理解した上で、事前にパートナー、ご家族とよく話し合っておくことも大切です。
もちろん、分からないこと、専門的なことは、当院にご相談ください。