卵巣腫瘍・卵巣嚢腫

卵巣腫瘍とは?

卵巣腫瘍とは?卵巣は、腫瘍の生じやすい臓器です。そのうちの卵巣内に脂肪・液体が溜まって生じるものを「卵巣嚢腫」と呼び、大半が良性です。
特に初期では症状が乏しく、進行し腫瘍が肥大してから初めて気づくケースも少なくありません。またその原因については、未だはっきりしたことが分かっていません。

良性の卵巣腫瘍「卵巣嚢腫(のう腫)」とは?原因や4種類の嚢腫の特徴

卵巣嚢腫には、漿液性嚢腫、粘液性嚢腫、皮様生嚢腫、チョコレート嚢腫があります。

漿液性嚢腫

思春期以降であれば、年齢を問わずに発症することのある嚢腫です。卵巣から分泌される透明の液体「漿液」が溜まって生じます。

粘液性嚢腫

閉経後の女性によく見られる嚢腫です。ゼラチン状の粘液が溜まって生じるものであり、著しく肥大することがあります。

皮様性嚢腫

20~30代の女性によく見られる嚢腫です。ヒトの身体のもととなる、胚細胞から発生すると言われています。嚢腫の中には、髪の毛、歯、骨、皮膚、脂肪などが入っています。

チョコレート嚢腫

20~30代の女性によく見られる嚢腫です。卵巣内で子宮内膜が発生・発育したものです。生理のたびに出血した血液が溜まることで、嚢腫が形成されます。

卵巣腫瘍・卵巣嚢腫の症状や大きくなるスピード

卵巣腫瘍・卵巣嚢腫の症状や肥大化するスピードについてご紹介します。

【良性】卵巣嚢腫の症状

特に初期には症状が乏しいものの、進行すると外から触って分かるほど肥大化することがあります。その他、腹痛、腰痛、頻尿、便秘などの症状を伴うこともあり、大きくなるにつれて茎捻転という卵巣のねじれを起こすリスクを生じることがあります。
良性の場合、急速に肥大化することはまずありません。

【悪性】充実性腫瘍(卵巣がん)

卵巣に生じた悪性の充実性腫瘍を、卵巣がんと呼びます。卵巣は、本来排卵のたびに組織が剥がれおち、修復されますが、この修復の際に組織が誤った形を成すことでがんが発生すると言われています。
症例によって異なりますが、悪性の場合には急速に肥大化することがあります。

卵巣がん:症状のセルフチェック
  • 下腹部の違和感
  • お腹の膨満感(腫瘍の巨大化や腹水が溜まることから)

卵巣嚢腫と同様、初期にはほとんど自覚症状がありません。上記のような症状が現れている場合には、ある程度進行していることが疑われます。

診断と治療方法

診断と治療方法内診、超音波検査、CT、MRI、腫瘍マーカーなどによる検査を行い、診断します。
ただ、最終的な確定診断のためには、手術などで採取した組織を病理検査にかける必要があります。

良性腫瘍

腫瘍の内容や大きさによって、それぞれ治療法は異なります。
チョコレートのう胞は、ホルモン療法で縮小することが期待できますが、将来がんになるリスクがあるとされており、手術を選択することもあります。
その他ののう腫(漿液性・粘液性・皮様性嚢腫)は縮小を期待できる薬物療法がなく手術の適応となります。
手術法は腹腔鏡手術または開腹手術となり、卵管と卵巣を除去する付属器摘出術、腫瘍のみを摘出する部分摘出術などがあります。将来的な妊娠を希望している場合には、できる限り後者を選択します。なお、卵巣は片方を摘出しても、妊娠が可能です。

悪性腫瘍

悪性腫瘍(卵巣がん)の場合、手術の基本は子宮全摘術+再側付属器摘除術+大綱切除術です。早期がんと進行がんによって術後の対応が分かれることはありますが、手術によって腫瘍をできる限り完全に近い形で切除します。その後、必要に応じて化学療法を行い、残存腫瘍、腫瘍細胞の消滅を図ります。
腫瘍が広範囲に拡大し、1回の手術で十分な摘出ができない場合には、腫瘍の一部を摘出し病理検査にかけ、診断後に化学療法を行うこともあります。
なお、卵巣がんは化学療法が効きやすいタイプのがんが多く、手術後は原則として化学療法を行います。