生理痛(月経困難症)
生理痛とは、月経期間中に下腹部などに生じる痛みのことを指し、ほとんどの女性が経験しています。そして、生理痛に加え腰痛、悪心、頭痛、腹部膨満感、倦怠感などの諸症状が認められ、日常生活に支障をきたしている状態を「月経困難症」と呼びます。
月経困難症は、その原因によって以下のように分類されます。
体質が原因の「機能性月経困難症」(原発性)
病気を原因とせず、体質によって起こる月経困難症です。特に若い方の場合は、機能性月経困難症によって、病気がなくても強い月経困難症に悩まされているケースが少なくありません。
病気が原因の「器質性月経困難症」(続発性)
子宮筋腫、子宮内膜症といった病気を原因として起こる月経困難症です。年齢を重ねるごとに、だんだんと症状が強くなる月経困難症が見られる場合は、特に注意が必要です。
月経不順
月経の周期、期間には個人差があります。ただ一般に、月経は25~38日ごとに訪れ、周期の変動は6日以内、生理期間は3~7日です。
月経不順とは、上記のうち1つ以上に当てはまらない生理のことを指します。月経不順は、若年性子宮体がんのリスク因子であることが指摘されています。特に妊娠を希望されている場合には、お早目にご相談ください。
不順ってどのくらいを指すの?病院に行く目安
身近な症状であるからこそ、「きっかけ」がないとなかなか受診できないということもあります。以下に目安をご紹介しますので、参考にしてください。もちろん、妊娠の可能性も考慮しなくてはなりません。
- 珍しく生理が遅れていて妊娠が心配・スケジュールが立てられない
- ずっと不規則だけれど、今回は3ヵ月以上生理が来ていない
- 激しい運動をしていて、生理が来なくなった
月経不順の原因となる疾患
中枢性排卵障害
強いストレス、無理なダイエットなどを原因として、脳の視床下部の働きが悪くなり、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が低下することで、排卵が起こらなくなります。
月経が止まる続発性無月経、月経の周期が長くなる稀発月経といった症状が見られます。
高プロラクチン血症
乳汁分泌に関わるプロラクチンというホルモンの血中濃度が異常な値を示す病気です。脳腫瘍、薬剤の使用などが原因であることがあります。
月経不順だけでなく、不妊症の原因にもなります。
多嚢胞性卵巣症候群
月経不順、月経異常、肥満、ニキビ増加、体毛増加、不妊症などの症状をきたす病気です。はっきりとした原因はまだ分かっていません。
長期にわたって無排卵のままでいると、将来的に子宮体がんを誘発する可能性が生じます。
早期卵巣機能不全
正常な閉経ではなく、何らかの原因で40歳未満で卵巣機能が低下し、月経が3ヵ月以上来ない状態を指します。中には、完全に月経がストップするもの(早発閉経)もあります。
卵胞ホルモンが欠乏している状態ですので、月経不順以外にも、更年期障害のようなさまざまな症状をきたします。
子宮性無月経
先天的な子宮奇形や後天的な子宮内感染、外傷などを原因として、子宮内腔が癒着して無月経となることがあります。
経血の異常(過多月経)
経血の異常とは、月経が多かったり、レバーのような血のかたまりが出てくることなどを指します。
なお、経血の状態にも個人差はありますが、レバーのような血のかたまりが出たときや、貧血を指定された場合には子宮筋腫や子宮腺筋症なども疑われれるため、お早目に当院にご相談ください。
血の量が多い(過多月経)
日中、ナプキンを約1時間で交換しなくてはならないほどの月経が続く場合には、月経過多の可能性があります。またそれ以下の量であっても、塊がたくさん付着するなどの場合にも子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮膜増殖症などの可能性が疑われます。また、この状態が長くつづくと貧血を合併しているケースも少なくありません。
レバー状の血のかたまりが出る
経血は、子宮の中ではレバー状の血のかたまりになって存在しています。女性ホルモンの分泌の過剰などによって子宮内膜が厚くなると、血のかたまりが溶け切らず、そのまま出てきてしまうことがあります。
若い方はそもそも女性ホルモンの分泌が活発であるため、このようなことは珍しくありません。ただ、頻度が高い場合には、子宮筋腫や子宮腺筋症などが疑われますので、お早目にご相談ください。
不正出血
不正出血とは、月経期間以外に、子宮などから出血することを指します。
不正出血の主な症状
- 生理日以外に出血(鮮血・茶色い血・薄い血)がある
- 月経の量が少ない
- 生理が長引く
不正出血の原因となる疾患
不正出血の原因として、無理なダイエット、急激な体重増加、ストレス、ホルモン分泌異常のほか、下記のような病気が潜んでいる可能性があります。
- 子宮体がん、子宮頸がん
- 子宮外妊娠
- 萎縮性膣炎
- 子宮筋腫
- ポリープ
- 性感染症 など
生理前の不調・PMS(月経前症候群)・PMDD(月経前不快気分障害)
生理開始の前から現れるさまざまな不快な症状の総称を「PMS(月経前症候群)」と呼びます。
生理を控え、女性ホルモンの分泌が急激に高まることを主な原因とします。ただ、それ以外にも、子宮内膜症、甲状腺機能の異常などによって引き起こされることがあります。
いつから現れる?PMS(月経前症候群)の主な症状
PMS(月経前症候群)は、生理の3~10日前くらいから出現し、生理が始まると軽快していく傾向があります。症状としては、以下のようなものが挙げられます。
身体に現れる症状
- 腹痛
- 頭痛
- 腰痛、背中の痛み
- 顔、手足のむくみ
- 下腹部の張り
- 乳房の張り
- 肌荒れ、便秘
- 関節痛、筋肉痛
精神的に現れる症状
- イライラ
- 不安感
- 集中力低下
- 涙もろくなる
- 混乱、焦燥感
- 孤独感
- 気分の落ち込み
自律神経系の症状
- ホットフラッシュ
- 食欲低下
- 過食
- めまい
- 倦怠感、疲労感
- 不眠、過眠
PMDDとは?症状やPMSとの違い
PMS(月経前症候群)のうち、特に「こころ」の不調が激しく、日常生活に支障をきたしているものを「PMDD(月経前不快気分障害)」と言います。PMS患者全体のうち、約5%がPMDDだと言われています。
生理開始の1~2週間くらい前から、以下のような症状が出現します。
- 自分で感情のコントロールができない
- 攻撃的な口調、振る舞いになってしまう
- 絶望的な気持ちになり、自分を傷つけること・死ぬことを考えてしまう
- 緊張、不安感を伴うパニックに陥る
- 身の回りのことができないくらいの倦怠感に襲われる
- 不眠、過眠といった睡眠障害
- 食欲増進、過食、食欲低下
- 集中力の低下
PMSを改善して和らげる方法
PMS(月経前症候群)の改善のためにできることをご紹介します。
生活習慣を改善するだけで、症状が和らぐことがあります。無理のない程度に、改善に取り組んでみましょう。
生活習慣の改善
規則正しい生活リズムを維持し、バランスのよい食事・適度な運動・十分な睡眠を大切にしましょう。これらはいずれも、自律神経、ホルモンバランスを整える効果が期待できます。
自律神経を適切にコントロールするために有効な栄養素としては、ビタミンA、ビタミンE、カルシウム、マグネシウムなどがあります。
漢方
望診(顔色、皮膚、舌などの観察)、聞診(音声、呼吸音など)、切診(腹診、肌診、触診など)、問診(病歴、自覚症状聴取)を行い、気・血・水のどこに問題があるかを考慮し、処方する漢方薬を選びます。
ピルの服用
エストロゲンとプロゲステロンを含むピルを毎日服用することで、ホルモンバランスの変動をコントロールしやすくなります。
PMS(月経前症候群)に対しては、一般にはホルモンの量が少ない「低用量ピル」および「超低用量ピル」を使用します。