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原因不明の不妊について

お互いに検査で異常が見つからない不妊

お互いに検査で異常が見つからない不妊不妊症の中には、問診や一般的な検査を行っても、原因を特定できないものがあります(原因不明不妊症)。
不妊症の原因は多岐にわたり、現代医学でも解明できていない領域があるためです。またストレスの種類・程度、ライフスタイルは人によって千差万別であり、数値などで評価したり、「このストレス・ライフスタイルが原因だ」とは言い切れない点なども影響しています。
ただ、さまざまな状況から原因を推測し、不妊治療を試行することは可能です。原因不明不妊症と診断された場合も、そのことだけで妊娠を諦める必要はまったくありません。
また後述しますが、原因不明不妊症の方の約2割に「ピックアップ障害」があると言われています。この場合も、治療により障害を改善し、妊娠を目指すことが可能です。

原因不明不妊の割合

不妊症のカップルのうち、約10%から20%が原因不明不妊と診断されます。これは、不妊症の全体の中でも比較的高い割合です。以下に原因不明不妊の詳細な割合や背景について説明します。

不妊症の定義

通常、カップルが避妊をせずに1年間以上妊娠しない場合、不妊症と診断されます。

検査の限界

現在の標準的な不妊検査では、卵巣機能、卵管の通過性、精液の質、子宮内膜の状態などを評価します。しかし、これらの検査で明確な異常が見つからない場合、原因不明不妊とされます。

 

検出困難な異常

卵子や精子の微細な異常、受精障害、胚の発育不良、免疫反応など、標準的な検査では検出できない問題が原因である場合があります。

ストレスやライフスタイル

精神的なストレス、ライフスタイルの要因も不妊に影響を与えることがありますが、これらも原因不明不妊の一因と考えられることがあります。

原因不明不妊で考えられる理由

  • 黄体化未破裂卵胞(※)
  • 軽度子宮内膜症
  • 軽度卵管周囲癒着
  • 卵管の卵または胚の輸送障害
  • 着床障害
  • 精子の受精障害
  • 卵子の活性化障害

※黄体化未破裂卵胞とは、成熟した卵胞が破裂(排卵)できず黄体化した状態を指します。

原因不明不妊症はあくまで「原因が特定できない不妊症」であり、原因がないわけではありません。上記のような病変が疑われること、そしてさまざまな状況を踏まえた上で、対応・治療をすることが大切です。

原因不明妊娠

原因不明妊娠の2割が「ピックアップ障害」通常、排卵が起こると、卵巣から放出された卵子は卵管の先端にある繊毛(細かい毛のような構造)によって卵管内に取り込まれます。この繊毛の動きが卵子を卵管内に誘導し、精子と出会うために必要です。
ピックアップ障害は、卵巣から排卵された卵子が卵管に取り込まれる過程に問題がある状態を指します。ピックアップ障害がある場合、繊毛の動きが正常に機能しない、または卵管の形状や位置に問題があるため、卵子が卵管に取り込まれにくくなります。その結果、卵子と精子が出会うことが難しくなり、受精が成立しないことが不妊の原因となります。

原因

卵管周囲の癒着

子宮内膜症や骨盤内の炎症(骨盤炎症性疾患)によって、卵管周囲に癒着が生じることがあります。これが卵管の動きを妨げることがあります。

卵管の機能異常

卵管自体の機能が低下している場合、繊毛の動きが不十分になり、卵子をうまく取り込むことができません。
先天的な異常:生まれつき卵管の形状や位置に異常がある場合、ピックアップ機能に問題が生じることがあります。

診断方法

卵管造影検査

卵管の通過性や形状を確認するための検査です。造影剤を使ってX線撮影を行います。

ラパロスコピー
(腹腔鏡検査)

腹部に小さな切開を入れ、カメラを挿入して直接卵巣や卵管の状態を観察します。

治療方法

腹腔鏡手術

癒着を解消するための手術です。卵管の周囲にある癒着を取り除き、卵管の動きを改善します。

生殖補助医療(ART)

体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)などの生殖補助医療を利用することも効果的です。これにより、卵子が卵管を通過する過程を経ずに妊娠が可能になります。

妊娠しづらい人の特徴

ではここで改めて、妊娠しづらい人の特徴について考えてみましょう。
妊娠を希望する方で以下の項目に1つでも該当する場合には、お早めに当院にご相談ください。

35歳を過ぎている

女性も男性も高齢になると、妊孕性が低下すると言われています。
特に女性の場合、卵子の質が30歳くらいから徐々に、35歳から急激に低下します。個人差はありますが、30歳を過ぎると妊娠のしやすさが加齢とともに低下していくことは覚えておきましょう。

太り過ぎ・痩せすぎ

太っている人は、ホルモンバランスが乱れがちです。また背景に糖尿病などの生活習慣病があることも多く、これら内分泌疾患も妊娠のしづらさ、妊娠中のリスクとなります。
一方で、痩せすぎも注意が必要です。栄養不足になると排卵が止まってしまう・不規則になる、無月経になるといったことがあるためです。

喫煙をする・お酒を
よく飲む

喫煙は卵子や精子の質を低下させることから、不妊のリスクを上昇させます。
また過度の飲酒は、ホルモンバランスを乱し、同様に不妊のリスクを高めます。ストレスの解消という側面もあるかと思いますが、妊娠の成立のためには飲み過ぎないようにしてください。

性感染症にかかっている

性別に関係なく、クラミジア感染症や淋菌感染症は不妊の原因になることがあります。
疑わしい症状がある方はもちろん、無症状であっても検査を受け、陽性であった場合はきちんと治療を行うことが大切です。

もともと月経異常がある

月経周期が不規則、経血量が多い、生理痛がひどいといった月経異常が、不妊の原因になることがあります。
子宮内膜症などの婦人科疾患が見つかることもあるため、早めに検査を受けましょう。

腹腔鏡検査

原因不明の不妊において、特に重要となるのが腹腔鏡検査(ラパロスコピー)です。
腹腔鏡検査とは、腹部に入れた小さな切開口からカメラを挿入し、卵巣・卵管を直接観察する検査です。子宮卵管造影検査ではできないピックアップ障害の診断が可能です。
腹腔鏡検査では、病変を発見次第、その場で診断し、癒着剥離などの治療を行うことが可能です。

原因不明不妊症が
妊娠できる可能性

ピックアップ障害が認められる35歳以下の女性に癒着剥離術を行った場合、5~6割において1年以内に人工授精を含めた自然妊娠が可能となります。妊娠に至らない場合には、体外受精・顕微授精などを検討します。

原因不明不妊の治療ステップ

原因不明不妊の治療ステップ原因不明不妊の患者様には、詳細な検査を通じて見逃されている可能性のある原因を特定し、ライフスタイルの改善や精神的なサポートを提供しながら、段階的に高度な生殖補助医療を試みることが推奨されます。
当院では、最新の技術と専門的なサポートを提供し、患者様に最適な治療法を提案いたします。不妊治療についてのご相談や詳細については、どうぞお気軽にお問い合わせください。

Step.1
基本的な治療法の試行

タイミング法

タイミング療法は、排卵のタイミングに合わせて性行為を行うことで、自然妊娠の可能性を高める方法です。このステップは、基本的な不妊検査で異常が見つからない場合や、まだ積極的な治療を希望しないカップルに対して推奨されます。

このような方におすすめ
  • 不妊期間が1年未満のカップル
  • 基本的な不妊検査で特に異常が見つからない場合
  • 自然妊娠を希望するカップル

タイミング法について
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ライフスタイル改善と
カウンセリング

健康的な生活習慣を維持し、精神的なサポートを受けることで、妊娠しやすい体質を作ることができます。このステップは、全ての患者様に推奨されますが、特にストレスが原因で妊娠しにくくなっている可能性がある場合に有効です。

このような方におすすめ
  • ストレスや不安を感じているカップル
  • 健康的な生活習慣を見直したいと考えているカップル
  • 基本的な不妊治療を補完する目的

心理カウンセリングについて
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Step.2
より積極的な治療法の検討

人工授精(AIH)

人工授精(AIH)は、精子を直接子宮内に注入することで受精の確率を高める方法です。このステップは、タイミング療法で結果が出ない場合や、軽度の男性不妊が疑われる場合に推奨されます。

このような方におすすめ
  • タイミング療法を試みたが妊娠に至らない場合
  • 軽度の男性不妊(精子の運動性や数に問題がある場合)
  • 精子が子宮頸管を通過するのが難しいと考えられる場合

人工授精について
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Step.3
高度な生殖補助医療(ART)の利用

体外受精(IVF)

体外受精(IVF)は、卵子を取り出して体外で受精させ、受精卵を子宮に戻す方法です。このステップは、IUIで妊娠が成立しない場合や、より高い受精率を求めるカップルに対して推奨されます。

このような方におすすめ
  • IUIを試みたが妊娠に至らない場合
  • 女性の年齢が高く、早期の結果を求める場合
  • 両方の卵管が閉塞している場合
  • 子宮内膜症や重度の男性不妊が疑われる場合

体外受精について
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顕微授精(ICSI)

顕微授精(ICSI)は、卵子に精子を直接注入する方法で、受精障害が疑われる場合に特に有効です。このステップは、IVFでも妊娠が成立しない場合や、精子の質に問題がある場合に推奨されます。

このような方におすすめ
  • IVFを試みたが受精がうまくいかなかった場合
  • 精子の運動性や形態に重大な問題がある場合
  • 精子の数が非常に少ない場合
  • 受精障害が確認された場合

顕微授精について
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