子宮鏡下手術(TCR)
子宮鏡下手術とは、内視鏡で子宮内を観察し、子宮粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内の癒着などを切りとる手術のことをいいます。妊娠(おもに胚の着床)を妨げている上記の問題を解決することで、妊娠しやすい環境を取り戻します。
内視鏡手術であるため侵襲が少なく、手術当日の夜には歩行や食事が再開できます。また原則1泊2日で受けられる手術です。
当院では、経験豊富な医師による子宮鏡下手術を行っております。手術時間は15~60分程度です。
子宮鏡手術の適応疾患
子宮粘膜下筋腫
子宮の内膜に発生する良性の腫瘍で、筋腫の中でも特に内腔に突き出ているため、不妊や流産の原因となりやすいです。また、月経異常や過多月経を引き起こし、貧血を伴うこともあります。
子宮内膜ポリープ
子宮内膜に発生する良性の増殖物で、通常は小さく、単一または複数存在します。不妊の原因となることがあり、異常な子宮出血(特に月経以外の出血)や過多月経を引き起こすことがあります。
中隔子宮
子宮内腔が完全または部分的に隔壁で二分されている先天的な子宮の奇形で、内腔の形状が異常であるために、不妊や反復性流産のリスクが高くなります。この隔壁は子宮内膜と筋層からなるため、受精卵が着床しにくいことがあります。
子宮内腔癒着症
(アッシャーマン症候群)
子宮内膜が炎症や手術後の瘢痕組織の形成によって癒着し、子宮内腔が狭くなる状態です。癒着が広範囲にわたると月経が減少したり、無月経になることもあります。また、受精卵が着床できずに不妊の原因となったり、反復性流産を引き起こすことがあります。
子宮鏡手術の
メリット・デメリット
メリット
低侵襲手術
子宮鏡手術は経腟的に行うため、腹部を切開する必要がなく、患者の体への負担が少ないです。
早い回復
入院期間が短く、日帰り手術や短期間の入院で済むことが多いため、早期に日常生活に戻ることができます。
高精度の診断と治療
直接子宮内を観察しながら手術を行うため、病変の位置や大きさを正確に確認し、適切な治療を施すことができます。
少ない出血量
子宮鏡手術は小さな切開や経腟アプローチを使用するため、出血量が少なく、輸血のリスクも低減されます。
低い感染リスク
手術創が小さいため、術後の感染リスクが低くなります。
デメリット
技術の専門性
子宮鏡手術は高度な技術を要するため、経験豊富な医師が行わないと効果的な治療が難しいことがあります。
限界のある適応症
子宮鏡手術が適応となる疾患は限られており、すべての子宮内病変に対して適用できるわけではありません。例えば、大きな筋腫や重度の癒着には向かない場合があります。
術後合併症のリスク
低侵襲とはいえ、術後に出血や感染、子宮穿孔などの合併症が発生するリスクがあります。
全身麻酔のリスク
全身麻酔を使用する場合、そのリスク(麻酔による合併症、アレルギー反応など)を伴います。
再手術の可能性
子宮鏡手術で完全に病変を取り除けなかった場合、再手術が必要になることがあります。
子宮鏡手術の流れ
1事前準備
2子宮の入口を広げる
麻酔をかけた状態で、子宮の入口を広げ、子宮鏡を挿入します。
3処置
子宮内腔をモニターで観察しながら、電気メスを用いて病変を除去します。
4終了
子宮鏡を抜き、手術は終了です。手術後、採血を行います。
子宮鏡手術後のシャワーや
性行為など注意点
- 手術後、一時的な出血が生じることがあります。
- 手術後、特に問題なければ翌日からデスクワーク等の再開が可能ですが、できれば2日間ほどはご自宅での療養をおすすめします。身体を使う仕事、激しい運動の再開時期については医師にご確認ください。
- 手術後の1週間は、シャワーのみに留め、入浴やサウナは避けてください。
- 手術後の1週間は、性行為を避けてください。
子宮鏡手術のリスク・副作用
出血
電気メスを使用するため切除と同時に止血作用が働きますが、手術後に一時的な出血が生じることがあります。
感染症
子宮・卵巣・卵管・腹腔内での感染が生じることがあります。予防的に抗生物質を使用し、感染のリスクをできる限り下げています。
子宮腔内癒着
細菌感染し子宮内膜炎が生じた場合に、子宮の内腔で癒着が起こることがあります。
子宮穿孔
電気メスで子宮の壁に穴をあけてしまう可能性がゼロではありません。腹腔鏡手術、開腹手術が必要になります。
水中毒
手術中、視野を確保するため子宮内に水を流します。その水が吸収され体内のナトリウム濃度が低くなると、水を大量に飲んだ時にも起こる水中毒が発生することがあります。現在は水中毒が起こりにくい生理食塩水(電解灌流液)を使用しているため、起こることはごく稀です。手術後は採血を行い、水中毒になっていないかを確認します。
深部静脈血栓症・肺塞栓症
手術時間が長くなった場合など、脚の静脈に血栓が生じる可能性があります(深部静脈血栓症)。
手術時間が長くなる場合には、弾性ストッキングの着用、間歇的空気圧迫法などによって発症を予防します。
子宮鏡手術の費用
保険点数 | ||
子宮鏡下子宮筋腫摘出術 | 電解質溶液あり | 19,000点 |
電解質溶液なし |
17,100点 | |
子宮内膜掻把 | 1,420点 |
高額療養費制度の「限度額認定証」事前申請について
高額療養費制度を利用する場合、予め「限度額認定証」の交付を受け、窓口でご提示いただくと、患者様のご負担が自己負担限度額内に抑えられます。事前に交付を受けていない場合も高額療養費制度を利用することは可能ですが、一時的であってもお支払額が多くならないように、健康保険組合などへの事前申請を行い、認定証の交付を受けておくことをおすすめします。
なお認定証は、受診する医療機関ごとに必要になります。
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