- 卵子凍結とは
- 当院のノンメディカルな卵子凍結
- 独身でも卵子凍結をする理由
- 保険適用の卵子凍結
- 卵子凍結のメリット・デメリット
- 卵子凍結のやり方
- 凍結卵子を使用する際の流れ
- 卵子凍結の妊娠率
- 卵子凍結は何歳までできる?
- 卵子凍結の注意点
- 卵子凍結の費用
卵子凍結とは
卵子凍結とは、将来的な妊娠に備えて卵子を凍結・保存することを指します。凍結された卵子は、妊娠を希望するタイミングで融解(解凍)して使用します。
卵子凍結は主に、「今ではなく将来的な妊娠を希望している・検討している」「今は仕事に集中したい」「パートナーとの都合が合わない」「近々がん治療を受ける予定で抗がん剤・放射線の影響が心配」といった場合に行われます。
年齢を重ねるとだんだんと卵子の質および妊娠率が低下するため、将来的な妊娠を希望するすべての人が、選択肢として知っておくべき技術と言えます。
なお当院では、卵子(未受精卵)に加えて、受精卵や精子の凍結・保存にも対応しております。
当院のノンメディカルな
卵子凍結
がん治療を控え抗がん剤・放射線の影響を心配して卵子を保存することを「医学的適応の卵子凍結」と呼びます。
当院ではこれに加え、がん治療などは受けないけれど何らかのご事情で卵子を凍結保存する「ノンメディカルな卵子凍結」を行っています。
現在パートナーがいる方だけでなく、パートナーがいない方、将来的に妊娠をしたいかどうかまだ判断できないといった方でも、卵子を凍結保存することが可能です。
独身でも卵子凍結をする理由
現代社会において、キャリアの選択やライフスタイルの多様化に伴い、多くの女性が将来の妊娠の選択肢を考えるようになっています。未婚であっても卵子凍結を選ぶ理由はさまざまですが、以下にその主な理由とメリットをご説明いたします。
将来の家族計画をサポート
卵子の質と数は年齢とともに低下します。若い時期に卵子を凍結しておくことで、将来、妊娠の選択肢を広げることができます。これは特に30代後半以降に妊娠を希望する場合に有効です。
キャリアと家庭の両立
現在の仕事やキャリアに集中したい方にとって、卵子凍結は安心して将来の妊娠を計画する手段となります。時間の制約を感じずにキャリアを追求しながら、将来的に家庭を持つ希望を持つことができます。
パートナーとのタイミング調整
適切なパートナーを見つけることは重要なライフイベントです。卵子凍結により、適切な時期に最適なパートナーとの妊娠を計画することが可能となります。
医療的理由
がん治療などの医療的な理由で、卵巣機能が低下する可能性がある場合、治療前に卵子を凍結しておくことで将来の妊娠の可能性を確保することができます。
保険適用の卵子凍結
がんなどの治療により卵巣機能が低下するリスクがある場合、治療前に卵子を凍結することで将来の妊娠の可能性を確保することができます。この場合、保険適用の対象となることがあります。
保険適用の範囲
保険適用で行える卵子凍結には、以下のような範囲が含まれます。
検査費用
卵子凍結に必要な各種検査(ホルモン検査、超音波検査など)の費用が保険でカバーされます。
採卵手術費用
卵子を採取するための手術の費用も保険でカバーされます。
凍結保存費用
凍結および保存の初期費用が保険でカバーされることがあります。
保険適用外の範囲
ただし、保険適用の対象外となる部分もあります。
定期的な保存費用
卵子の凍結保存の継続費用(年次保管料など)は、保険適用外となることが多いです。
保存期間が長期にわたる場合の費用
長期間にわたって卵子を保存する場合、その費用は自己負担となることが一般的です。
卵子凍結の
メリット・デメリット
卵子凍結は、将来の妊娠の選択肢を確保するための有力な方法ですが、メリットとデメリットの両方が存在します。ここでは、卵子凍結のメリットとデメリットについて詳しく説明します。
卵子凍結のメリット
将来の妊娠の選択肢を広げる
卵子の質は年齢とともに低下しますが、若いうちに凍結した卵子はその時点の質を維持します。将来的に妊娠を希望する際に、質の良い卵子を使用できるため、妊娠の成功率が高まります。
キャリアと家庭の両立
キャリアの進行や個人のライフプランに合わせて、妊娠のタイミングを自分でコントロールできます。これにより、仕事やその他の重要なライフイベントに集中することができます。
医療的理由による安心
がん治療や他の治療が卵巣機能に影響を与える場合、治療前に卵子を凍結しておくことで、将来的な妊娠の可能性を維持できます。
精神的な安心感
自分の将来の妊娠の可能性を確保することで、心理的な安心感を得ることができます。これにより、不妊に対する不安を軽減し、現在の生活に集中することができます。
卵子凍結のデメリット
成功率の保証がない
卵子凍結は妊娠の可能性を高める方法ですが、確実に妊娠できるわけではありません。卵子の凍結・解凍・受精・着床の各ステップでリスクが存在します。
コストがかかる
卵子凍結の費用は高額で、保険適用外の部分も多いです。採卵手術、凍結保存、保存維持費用などが自己負担になることが多く、経済的な負担が大きいです。
医療的リスク
採卵手術には一定のリスクが伴い、ホルモン療法による副作用(腹痛、吐き気、血栓など)が発生する可能性があります。
情報の不確実性
技術の進歩や個々の卵子の保存状態により、現在の卵子凍結の成功率や妊娠率が将来どのように変わるか予測が難しいです。
卵子凍結のやり方
1ご予約
生殖医療センターのご予約をWEBまたはお電話でお取りください。
2初診
医師が診察を行います。また血液検査(抗ミュラー管ホルモンの測定)、自己注射教室の受講など、採卵に必要な準備を整えます。
3グレイスバンクの登録
初診の後、次の受診までに「グレイスバンク(卵子凍結保管サービス)」にご登録いただきます(登録必須)。
グレイスバンクへの登録は、スマホやパソコンから行うことができます。
4採卵の準備
月経開始3日目以降、卵子の育成・排卵誘発のため、自己注射を行っていただきます。
また月経9~10日目ごろ、外来受診をしていただきます。
5卵胞の確認
卵胞の発育状況を確認し、良ければ採卵が決定します。
※卵胞の発育状況によっては、数回の受診が必要になることがあります。
6採卵
卵子を採取し、凍結保存します。
採卵は静脈麻酔下で行いますので、ほとんど痛みは感じません。
凍結卵子を使用する際の流れ
1授精
解凍後、旦那様の精子と授精させます。
2胚培養
胚(受精卵)を培養します。
3胚凍結保存
今回使用しない胚については、凍結保存します。
4胚移植(ET)
胚を子宮へと移植します。
5妊娠確定
移植から約2週間後、検査を行い妊娠を判定します。
卵子凍結の妊娠率
凍結した卵子は、採取・凍結した時の年齢などによって、融解後の生存率、受精率、臨床妊娠率が異なります。
融解した卵子を使って体外受精をした場合の生存率、受精率、臨床妊娠率は以下のようになっています。
特に、生存率と臨床妊娠率において、「35歳以下」と「40歳を含む幅広い年代」では差が出ています(いずれも卵子凍結時の年齢)。
35歳以下で 卵子凍結をした場合 |
40歳を含む幅広い年代で 卵子凍結をした場合 |
|
生存率 | 90~97% | 68.6~89.7% |
受精率 | 71~79% | 71.7~85.8% |
臨床妊娠率 | 36~61% | 10.8~3.3% |
Fertillity steril 2013;99:37-43
Cil AP, Bang H, Oktay K. Age-specific probability of live birth with oocyte cryopreservation: an individual patient data meta-analysis. Fertil Steril. 2013;100:492–9.
卵子凍結は何歳までできる?
卵子凍結は、一般的に以下の年齢範囲で行うことが推奨されていますが、医学的には特定の上限年齢は設けられていません。ただし、卵子の質や数が年齢とともに低下するため、推奨される年齢範囲があります。
推奨される年齢
20代〜30代前半
卵子の質と数が最も良好な時期です。この時期に卵子を凍結することで、将来の妊娠の成功率を高めることができます。
30代後半
30代後半でも卵子凍結は可能ですが、卵子の質が低下し始めるため、妊娠の成功率もやや低下します。それでも、まだ妊娠の可能性を確保するための有効な手段です。
注意が必要な時期
40代になると、卵子の質と数がさらに低下し、妊娠の成功率が大幅に減少します。そのため、この時期に卵子凍結を考える場合は、医師とよく相談し、リスクと期待できる結果について十分に理解することが重要です。
卵子凍結の注意点
受診の際にもご説明いたしますが、卵子凍結には以下のような注意点がございます。
- 排卵誘発剤の使用による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、採卵時の痛み・腹腔内出血・炎症、麻酔の一時的な副作用が起こる可能性があります。
- 卵胞に針を刺しても採卵ができない場合、卵子の未成熟・変性が認められる場合など、凍結ができないことがあります。
- 将来的に妊娠を望まれた際にも、融解した卵子の回収ができない場合、卵子の変性が生じてしまった場合など、授精に至らないことがあります。
- 融解後の卵子を使っても授精しない場合、胚が順調に発育しない場合など、胚移植が実施できないことがあります。
卵子凍結の費用
卵子凍結にかかる費用の例
初診から採卵までの診察・検査・薬剤など | 約15万円 |
---|---|
採卵・凍結(卵子9個) | 約30万円 |
採卵後の診察 | 約3,000円 |
合計:約45万円 ※卵胞の発育状況によって変動します |
料金表
料金 | ||
採卵 | 採卵術 | 32,000円 |
個数加算 1個 | 24,000円 | |
2-5個 | 36,000円 | |
6-9個 | 55,000円 | |
10個以上 | 72,000円 | |
※麻酔管理料 別途 | ||
卵子 凍結保存 |
導入時 | 50,000円 |
1個 | 50,000円 | |
2-5個 | 70,000円 | |
6-9個 | 102,000円 | |
10個以上 | 130,000円 |
2023.09.01時点