がんの治療後に
妊娠を希望される方へ
将来的な妊娠・
出産のための卵子(未受精卵)・受精卵・精子の
長期凍結保存
今はがん治療を優先しなければならない
けれど、将来は赤ちゃんが欲しい・子どもを育てたい…
そんな想いに。
医学の飛躍的な進歩により、がんを完全に克服できるケースが増えています。
その中で、抗がん剤治療、放射線治療はがんの標準治療として広く行われている一方、精子・卵子に影響を及ぼし、不妊の原因になることがあります。また、他の病気と比べて治療期間が長期にわたることも多く、女性の場合には年齢の問題も看過できません。
当院は、がん生殖医療学会の認定施設です。抗がん剤治療前の未受精卵子・精子・受精卵の長期保存が可能であり、これががん治療後の妊娠・出産のための希望となります。
なお、対象となる方が比較的お若いこと、保存期間が長期に及ぶことを考慮し、費用はできる限り低額に設定しております。
治療について
精子凍結
抗がん剤治療・放射線治療を開始する予定の若年男性の精子を採取し、凍結保存します。凍結精子は、長期保存が可能です。
がんの治療後、妊娠をご希望されるタイミングで融解（解凍）し、パートナーの女性から採取した卵子と顕微授精させ、その受精卵を女性の子宮へと移植します。
保存期間・更新について
長期保存が可能です。
ただし凍結から1年ごとにご意思を確認の上、ご希望であれば更新手続きを行っていただきます。
未受精卵子・受精卵凍結
卵子（未受精卵）または胚（受精卵）を凍結保存します。
人が妊娠できる可能性のことを「妊孕性（にんようせい）」と言いますが、この妊孕性を温存する方法として、未受精卵・受精卵の凍結保存が行われます。
体外受精・胚移植は婚姻関係（法律婚・事実婚）にあるご夫婦が対象となりますが、悪性腫瘍（がん）の治療予定がある場合には未婚の方でも未受精卵の凍結保存が可能です（※）。
がんの治療終了後、妊娠を希望されるタイミングで、主治医の妊娠許可を得た上で融解し、顕微授精させます。その後体外で培養し、子宮へと移植します。
※原則として採取は満45歳の誕生日まで、保存は満50歳の誕生日までとなります。
保存期間・更新について
凍結から1年ごとにご意思を確認の上、ご希望であれば更新手続きを行っていただきます。
がん治療中の生殖医療の
メリット・デメリット
メリット
将来の妊娠の可能性を保持
がん治療による生殖機能の低下や喪失に備えて、卵子や胚を凍結保存することで、将来の妊娠の可能性を保つことができます。
心理的安心感
生殖能力を保持する手段があることで、治療中の精神的な負担を軽減し、前向きな気持ちで治療に専念できる場合があります。
デメリット
時間と費用がかかる
生殖補助医療には治療開始前に時間が必要であり、また費用も高額になることがあります。
治療の遅延リスク
卵巣刺激や採卵などの手順により、がん治療の開始が遅れる可能性があります。
ホルモン療法の影響
卵巣刺激に用いるホルモン療法が、一部のがん（特にホルモン感受性のがん）に悪影響を及ぼすリスクがあります。
治療の流れ
※初診の方、胚移植をご希望の方は、原疾患の主治医の先生の紹介状（治療許可とする）が必要です。
既婚の方（胚移植）
1卵巣刺激
ホルモン療法で卵巣を刺激し、複数の卵子が成熟するよう促します。
2採卵
腟から卵巣に針を刺し、成熟した卵子の回収を行います。
3体外受精（顕微授精）
回収した卵子と精子とを、顕微鏡で観察しながら体外で受精させます。
4受精卵（胚）の凍結保存
受精卵は、将来の使用に備え凍結保存します。
5妊娠を希望された時に
凍結受精卵を融解
妊娠をご希望されたタイミングで、凍結胚を融解（解凍）します。
6胚の移植
融解した胚を、子宮へと移植します。
未婚の方（卵子凍結）
1卵巣刺激
ホルモン療法で卵巣を刺激し、複数の卵子が成熟するよう促します。
2採卵
腟から卵巣に針を刺し、成熟した卵子の回収を行います。
3未受精卵の凍結保存
採取した卵子を、受精させずに凍結し保存します。
4妊娠を希望された時に
未受精卵を融解
妊娠をご希望されたタイミングで、凍結した未受精卵を融解（解凍）します。
5顕微授精
融解した卵子を、顕微鏡で観察しながら精子と受精させます。
6胚の移植（一部凍結保存）
受精卵を子宮へと移植します。残りの胚は、必要に応じて凍結保存します。
原疾患の主治医からの医療情報の提供をお願いします
十分な安全性の確保・妊孕性の温存のため、がんの種類・進行度・治療方法・治療開始時期・採卵可能な全身状態であることが記載された紹介状をお持ちくださいますよう、お願いします。
若い世代への
助成金制度について
京都府では2017年度より小児およびAYA世代（思春期・若年）を対象として、がん患者生殖機能温存療法の助成事業を開始しております。