- 生殖補助医療（ART）とは
- 保険適用で受ける体外受精（ART）
- 生殖補助医療（ART）による治療が
望ましい場合 - 体外受精の7つのステップ
- 胚にやさしい培養器
「EmbryoScope ＋®︎」 - 副作用・リスクについて
- 採卵後も万全のサポート体制
- 各種書類のダウンロード
生殖補助医療（ART）とは
生殖補助医療（ART）とは、体外受精・胚移植（IVF-ET）、顕微授精（ICSI）、凍結融解胚移植などの生殖補助にかかわる医療の総称です。
体外受精・胚移植について
体外に取り出した卵子に精子をふりかけて受精させ、その受精卵を子宮内へと戻し、妊娠を目指すという方法です。
顕微授精について
体外にて、卵子を顕微鏡で拡大観察しながら、細いガラス針で1つの精子を注入し、その受精卵を子宮内へと戻し、妊娠を目指すという方法です。厳密には体外受精の1つに分類されます。
主に、精子の数が少ない・運動率が低い場合、自然な受精が起こりにくい場合に行われます。
凍結融解胚移植について
体外受精、顕微授精で得られた受精卵を凍結保存した上で、融解後に子宮へと移植する方法です。
複数個の受精卵が得られた場合に凍結保存をしておき、必要時に融解させ子宮へと移植するという使い方ができます。主に、妊娠に適した時期を待つ（採卵によって負担がかかった時期を避ける等）ために活用します。また次回妊活開始時まで保存も可能です。
保険適用で受ける体外受精（ART）
2022年4月より、人工授精・体外受精・顕微授精などが保険適用で受けられるようになりました。
いずれも、日本生殖医学会のガイドラインでその安全性・有効性が確認されています。
保険適用の不妊治療
- タイミング法
- 人工授精
- 体外受精
- 顕微授精
- 胚凍結保存、胚移植
- および採卵、採精、受精卵・胚培養などの不妊治療に必要な処置
体外受精・顕微授精に
おいて保険適用となる条件
体外受精・顕微授精を保険診療として利用するためには、以下の3点を満たす必要があります。
お二人の関係
戸籍の情報、事実婚関係にある場合には以下の申告について認められなければなりません。
- 2人とも重婚ではない
- 同一世帯である（同一世帯でない場合はその理由の申告が必要）
- 不妊治療の結果産まれた子どもを認知する
法律婚・事実婚のいずれの場合も、治療の開始時の治療計画の作成、またその治療計画に従って治療を進めることが必要です。そのため、お二人でご来院いただくか、ビデオ通話にて、説明を受けた上での同意も必要となります。
年齢について
治療計画を作成した時点で、女性が43歳未満でなければなりません。
男性については、特に年齢の制限はございません。
試行回数について
保険診療として実施される体外受精・顕微授精の試行回数には、以下のような制限があります。
- 女性が40歳未満の場合…6回まで
- 女性が40歳以上～43歳未満の場合…3回まで
※試行回数は、胚移植（受精卵の移植）の回数でカウントされます。そのため、採卵や採精の回数は問われません。
※一子あたりの回数制限であり、次子で再び体外受精・顕微授精を行う場合は0からカウントします。
生殖補助医療（ART）による
治療が望ましい場合
受精が困難な場合
- 卵管が詰まっていると思われる
- 精子数が少ない・運動率が少ない
- 女性に抗精子抗体（精子の動きを止める免疫）がある
原因が分からない
長期の不妊
- 検査で特に異常がないにもかかわらず、タイミング法・人工授精でなかなか妊娠に至らない
- 一般的な検査で原因が特定できない（卵管が卵子を吸い上げない・卵子や受精卵の質の低下・着床障害など）
体外受精の方が
一般不妊治療よりも
身体的負担が少ない場合
- 強い排卵障害を伴う多嚢胞性卵巣症候群があり、排卵のコントロールが困難
早期の妊娠を希望する・
早く妊娠した方がいい場合
- 高年齢、卵巣機能の低下があり、早期の妊娠を望んでいる・推奨される
- 社会的事情などから妊娠を急いでいる
体外受精の7つのステップ
体外受精は、基本的に以下のような手順で進めていきます。
1卵巣刺激
より多くの卵子を採卵するため、月経の3日目から排卵誘発剤を内服または注射で連日投与します。
当院では、基本的に自己注射教室を受講していただき、ご自宅で自己注射を行っていただくプロトコールで行っております。
視聴に必要なパスワードは、診察の際にスタッフからお渡しします。
2採卵
卵胞が十分に育ったことを超音波検査で確認した上で、卵胞内の卵子を回収します。
鎮痛剤と鎮静剤を点滴投与（静脈麻酔）するため、痛みは感じません。
3授精
卵子に精子を振りかけ受精を図る方法（体外受精）と、顕微鏡で観察しながら精子1個を卵子に注入する方法（顕微授精）があります。
4胚培養
受精の成立を確認できれば、その受精卵（胚）の発育を観察しながら専用の培養液で培養します。当院では、胚に優しい環境を維持できる最新型の培養器「EmbryoScope ＋®︎」を導入しています。
受精から5日後に移植を行いますが、治療法により受精２～５日後に移植や胚凍結する場合もあります。
5胚凍結
発育した胚を、凍結保存します。
凍結した胚は、患者様のコンディションが整い、妊娠しやすい状態を迎えた時に融解し（溶かし）、移植することができます。
胚凍結を行うのはどんな時？
- 受精卵（胚）が複数個できた場合
- 採卵直後に移植することが推奨されない（子宮内膜・卵巣の状態が良くない、卵巣過剰刺激症候群発症などの副作用の危険性がある）場合 など
6胚移植（ET）
超音波装置で確認しながら、細いチューブを用いて胚を子宮へと移植します。
胚移植のバリエーション
レーザー孵化補助法
胚の透明帯（殻にあたる部分）を破れず孵化ができないという状況を避けるための方法です。胚に影響を及ぼさないレーザーで透明帯を削り、孵化を助けることで着床率を高めます。
ヒアルロン酸含有培養液注入
胚の子宮内膜への接着（着床）を促進するヒアルロン酸を高濃度で含む培養液を使用し、胚と一緒に移植します。
２段階胚移植法
胚盤胞移植の2～3日前に、初期胚を子宮へと移植する方法です。初期胚によって子宮内膜を刺激しておくことで、胚盤胞が着床しやすくなる可能性があります。
SEET法（子宮内膜刺激胚移植法）
胚盤胞を凍結保存する際、胚の培養に使った培養液の一部（SEET液）も同時に保存します。その後胚移植の2〜3日前にSEET液を子宮へと注入し、子宮内膜を刺激しておくことで、胚の着床を促進させます。
SEG法
GM-CSF（顆粒球マクロファージコロニー刺激因子）を、胚盤胞移植の3～4日前に子宮へと注入します。これにより子宮内膜が刺激されることで、胚が着床しやすくなる可能性があります。
7妊娠判定
移植後、9～14日後、採血にて判定します。
胚にやさしい培養器「EmbryoScope ＋®︎」
当センターでは、胚培養器「EmbryoScope ＋®︎」を導入しております。
受精卵（胚）の発育において理想的な、母体の子宮の環境を再現できる培養器です。すべての患者様の受精卵を、優しく、安全に育てます。
タイムラプスシステムとは
培養器には、内臓カメラと顕微鏡が備わっており、15分ごとに画像を撮影します。そしてその画像をつなげることで、動画のようにして胚の発育を観察できます。このシステムのことを、「タイムラプスシステム」と言います。
タイムラプスシステムにより、胚を培養器から取り出さず、発育状況を観察・確認し、適切なタイミングで移植できます。
タイムラプス培養により、胚が受けるストレスを軽減
従来の胚培養器には、タイムラプスシステムが備わっていませんでした。このため、胚の発育状況を確認するためには、培養器から取り出して顕微鏡で観察する必要があり、胚はその度に酸素・紫外線・温度変化によるストレスを受けていました。
当院ではタイムラプスシステムを備えた培養器「EmbryoScope ＋®︎」を導入しているため、胚にこれらのストレスを与えることがありません。
さらに、形態や発育スピードについては内蔵AIが自動で評価するため、より詳細かつ正確な胚の状態を知ることができます。
ストレスを抑制し良質な胚が多く得られやすいこと、より適切なタイミングで移植できることが、当院の胚培養における大きな強みと言えます。
副作用・リスクについて
卵巣刺激のために使用する排卵誘発剤、採卵時に使用する卵胞穿刺などの影響で、以下のような副作用・リスクが生じます。当院ではこれらの副作用・リスクを抑えるため万全の注意を払いながら、万が一の際には適切な処置・治療を行い、患者様の安全・安心をお守りします。
多胎妊娠
通常妊娠と比べると、多胎妊娠の可能性が高くなります。また1個の胚の移植であっても、通常妊娠と比べるとわずかに、双胎妊娠となる可能性が高くなります。
採卵による感染･出血
ごく稀な副作用として、卵巣などでの感染、腹腔内出血が起こることがあります。
異所性妊娠
通常妊娠に比べると、異所性妊娠（子宮外妊娠）を起こす可能性がわずかに高くなります。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
排卵誘発剤の使用により生じ得る副作用です。
たくさんの卵胞が発育することで、多量のエストロゲンが分泌され、卵巣腫大に伴う腹痛、腹水に伴う腹部膨満感・嘔気・下痢などが起こることがあります。
採卵後も万全のサポート体制
当院では、採卵後のお身体の状態について、細心の注意を払ってフォローアップしております。
身体を動かした時の響くような痛み、尿量の減少、息苦しさなどがございましたら、次回予定診察日を待たずにご相談ください。速やかに対処・治療いたします。
重症化予防のための薬の処方が必要な場合、症状の悪化が心配な場合にも、24時間対応します。
各種書類のダウンロード
各種書類は、以下からダウンロードしていただけます。
院内にもご用意がございますので、ご都合の良い方をご利用ください。