胸の痛みの原因と治療方針
乳房を構成する乳腺は、女性ホルモンの影響を受けやすく、閉経前の女性であれば排卵日から月経までは乳房の痛みを感じやすい時期です。
また、経口避妊薬や更年期症状に対するホルモン補充療法でも乳房の痛みを生じることがあります。
痛みが強い場合は消炎鎮痛剤(ロキソプロフェン、アセトアミノフェン)内服が効きますし、経口避妊薬やホルモン補充療法が原因の場合は、薬物の中止・変更を考えます。
乳房の痛みは乳がんとは関係ないことが多いですが、痛み以外に乳房が赤く腫れたり、熱を持った場合には炎症性乳がんや乳腺炎の可能性があるため、乳腺外科を受診してください。
また痛みに加えて乳房内や脇の下にしこりを触れた場合も乳がんの可能性がありますので受診してください。
胸・乳房に痛みを感じたら考えられる病気
乳腺症
母乳を乳頭まで運ぶ組織である乳腺で痛みを感じたり、分泌物が出たりする状態です。
30~40代の女性に多くみられ、女性ホルモンのバランスが崩れることで起こると考えられています。
生理前に痛みが強くなるものの、生理後には症状が治まることが多く、強い痛みが出ていなければ基本的に治療は必要ありません。
線維腺腫
乳腺にできる良性腫瘍で、好発年齢は10~20代ごろです。
エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンのバランスが崩れることで起こるのではないかと考えられています。
腫瘍は徐々に大きくなっていきますが、30代を境に成長が止まり、少しずつなくなっていきます。
針生検を行っても葉状腫瘍と区別できないこともあるため、急速に大きくなっている時には切除を検討します。
葉状腫瘍
乳房の腫瘍の中でも1%未満と、極めて稀な腫瘍です。
混合腫瘍で、良性、境界病変、悪性が含まれますが、約1/4は悪性だと言われています。
良性・悪性の診断は針生検でも難しいことがあるため、急速に大きくなっている時には切除を検討します。
乳腺炎
母乳が乳腺に溜まって起こるうっ滞性乳腺炎、細菌感染によって起こる急性化膿性乳腺炎、また授乳と関係なく起こる慢性乳腺炎などのタイプがあります。
いずれのタイプでも、乳房の腫れや痛みなどの症状が現れます。
乳がんでは「胸の痛み」は感じません
乳がんになると乳房のしこりや乳頭からの分泌物(茶色)、その他、皮膚の症状や乳頭のただれなどですが、乳房の痛みとは関係ないことが多いですが、現在、女性の乳がんは増えていて、30~64歳の方での死亡原因の1位となっています。
「乳房が痛くないから乳がんではない」とお考えにならず、その他の症状がある時はお早めにご連絡ください。
乳がんは早期発見・早期治療が大事で、早く見つけて治療を開始することで根治することが可能になります。
乳がんを早期発見するためにできること
特殊なケースを除き、乳がんで痛みなどの明確な自覚症状が現れることはありません。
そのため、早期発見・早期治療のためには定期的な乳がん検診の受診、そして毎月のセルフチェック(自己検診)が重要になります。
定期的な乳がん検診
乳がん検診には、市から補助を受けて受診できる「市の乳がん検診」と、乳がんが心配で早期発見のために検査を希望される方への「自費乳がん検診」があります。
当院は京都市による「乳がん検診の指定医療機関」で、2年に1回、市の乳がん検診を受けていただくことができます。
また、自費乳がん検診も行っています。
これらの検診を積極的に受診して、乳がんの早期発見・早期治療に努めるようにしましょう。
月1回のセルフチェック
乳がん発見のためにセルフチェック(自己検診)を毎月1回、行うようにしましょう。
セルフチェックのタイミングですが、乳房が張っていない生理後に行うのが良いとされています。
「セルフチェックの方法がわからない」という方のために、一般的な方法をご紹介します。
セルフチェックの方法
乳房の状態をチェック
鏡の前で両腕を上げた状態・下げた状態で、それぞれ「乳房の形・大きさの変化」「くぼみ・ふくらみ」「へこみ・ひきつれ」「ただれ・変色」などがないかチェックしましょう。
しこりの有無をチェック
仰向けになって、背中の下に枕・畳んだタオルを差し入れて胸を持ち上げた状態で、乳房を触ってしこりがないかチェックしましょう。
乳房に触る時は、4本の指を使って「の」の字を描くように軽くなでてください。
わきの下のしこりをチェック
起立した状態で指をまっすぐ伸ばして揃えて、わきの下に触れてしこりがないかチェックしましょう。
分泌物をチェック
指で乳頭の根元を軽くつまんで、血液が混じったような分泌物が出ていないかチェックしましょう。
また、下着に血液が付いていないかも確認します。
少量の透明・黄色い分泌物が出る程度なら問題はありません。